
皮膚にピリピリとした痛みや赤い発疹が出る「帯状疱疹」は、80歳になるまでに日本人の約3人に1人がかかると言われている病気です。帯状疱疹になると、皮膚の炎症が治まっても「帯状疱疹後神経痛」という合併症を引き起こし、長い間神経の痛みに悩まされるケースもあります。
そこで今回は、帯状疱疹後神経痛の症状や治療法について紹介します。
帯状疱疹後神経痛とは、発疹や水ぶくれといった帯状疱疹の症状が治まった後に持続的に発生する皮膚の鋭い痛みのことです。潜んでいた帯状疱疹の原因である水ぼうそうのウイルスが、神経を伝って皮膚表面に移動するときに皮膚の下の神経を傷付けます。この損傷によって神経が過剰に興奮したり痛みを抑える経路に障害が起きたりして、痛みが発生すると考えられています。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の合併症の中で最も頻繁に起こります。帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛に移行する確率は加齢とともに上がり、特に50歳以上で帯状疱疹になった方は移行しやすいとされています。
帯状疱疹についてはこちらのコラムを参照ください。
帯状疱疹後神経痛になると、次のような痛みが持続的・断続的に起こります。
帯状疱疹の症状が長引いた場合や高齢の場合は、これらの痛みが数年から一生続くこともあります。また、服がこすれるなど軽い刺激でも痛みを感じる「アロディニア」が起こると、着替えができない、顔を洗えないなど日常生活に支障が出ることもあります。
帯状疱疹後神経痛には全ての方に効く絶対的な治療法がなく、個人の痛みの程度や生活スタイルなどに合わせて薬物療法や神経ブロック治療を組み合わせて行うのが一般的です。
薬物療法 | 神経障害性疼痛治療薬(痛みを伝える神経伝達物質の過剰な放出を防ぐ)、抗うつ剤、抗けいれん薬などを用いる。 |
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神経ブロック治療 | 神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射して痛みが伝わる経路を遮る。顔を含めた全ての部位に注射が可能。 |
これらの治療法を用いても神経を元の状態に戻すのには長期間かかり、痛みを完全になくすことも難しいとされています。そのため、治療をするときは「痛みと上手に付き合っていく」という観点から長い目で取り組むことが大切です。
帯状疱疹後神経痛にならないためには、まず帯状疱疹の予防に努める必要があります。50歳以上であれば、可能な限りワクチン接種を行いましょう。また、帯状疱疹の原因である水ぼうそうのウイルスが活性化しないように、疲労やストレスをためないようにするなど体調管理に気を配って免疫力を低下させないことも大切です。