
認知症というと70代以上の高齢者に多いイメージがあるかもしれませんが、実は40~60代の方が発症しやすい「ピック病」という認知症も存在します。ピック病は比較的若い年代で発症するため、仕事や家庭生活に大きな支障をもたらすこともあります。
今回はピック病とは何かを解説し、ピック病の具体的な症状や治療法を紹介します。
ピック病とは、大脳の前方にある前頭葉と側頭葉が萎縮して起こる「前頭側頭型認知症」の一種です。前頭側頭型認知症のうち、脳の神経細胞内に「ピック球」という塊が見られる場合をピック病と呼び、前頭側頭型認知症の7〜8割がピック病であると言われています。ピック病の発症しやすい年代は高齢者に多いアルツハイマー型認知症と異なり、40~60代の初老期である場合がほとんどです。
前頭葉と側頭葉は人格や社会性などをつかさどる部分です。そのため、ピック病になり、前頭葉と側頭葉が萎縮してしまうと理性的な行動が取れなくなり、行動や感情のコントロールが難しくなります。
ピック病の具体的な症状は、異常な行動をとるようになる「行動障害」と、会話や物事の理解に影響する「言語障害」の大きく2つに分けられます。
ピック病の場合は、早い段階から物忘れの症状が見られるアルツハイマー型認知症と異なり、初期に記憶障害が目立つことはあまりありません。
現段階ではピック病の治療薬や進行を遅らせる薬はまだ開発されていません。そのため、薬物療法としては症状を緩和する効果が期待できる薬が処方されます。特に、行動異常の緩和を目的にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬が用いられることが多いです。
薬物療法以外にできることとしては、本人に残されている能力を活用して行動療法を行ったり、家族や介護者が本人の病態を理解して接し方を工夫したりするなどが挙げられます。
ピック病の症状を患者本人は認識できないため、周りの人が変化に気づくことが重要です。家族や知人の様子が今までと大きく異なり違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診しましょう。