尿失禁は、年齢を重ねるごとに起こりやすくなるもので、発症者の生活の質を損なう危険性があります。しかし、尿失禁の原因を理解し、適切な予防法を学ぶことで、尿失禁の症状の緩和・改善が見込めます。本コラムでは、尿失禁についての基本的な情報から、改善方法について解説します。

尿失禁とは

尿失禁とは、自身の意志とは関係なく尿が漏れてしまう状態を指します。この症状は、特に女性や高齢者に多く見られ、40歳以上の女性の4割、60歳以上の高齢者の半数以上が経験しています。尿失禁は日常生活を困難にするだけでなく、自尊心を傷つけることで、生活の質を低下させる可能性があります。

尿失禁の種類・症状

尿失禁は、切迫性尿失禁・腹圧性尿失禁・溢流性（いつりゅうせい）尿失禁・機能性尿失禁の4種類あります。それぞれの種類と症状については以下にまとめております。

• 切迫性尿失禁
  急に尿意に襲われ、トイレにたどり着く前にもれてしまう
• 腹圧性尿失禁
  咳やくしゃみ、ジャンプなどの腹部に力を入れる場面で尿がもれてしまう
• 溢流性（いつりゅうせい）尿失禁
  自分の意志で尿を出すことができず、膀胱がいっぱいになると、持続的に尿がもれ出してしまう
• 機能性尿失禁
  運動機能の低下（例：歩行障害でトイレに間に合わない）や認知症によりトイレで排尿できないことが原因でもれてしまう

尿失禁の原因・改善方法

尿失禁の原因は種類によってさまざまで、それぞれに適した改善方法があります。自分に当てはまる症状に対する改善方法を試してみると、症状の緩和・改善が期待できるでしょう。

1.切迫性尿失禁

原因	排尿に関する司令が脳に伝わらなくなることが原因の神経因性 前立腺肥大・膀胱がん・子宮脱などの病気が原因で起こる非神経因性 原因が特定できない場合もあり
改善方法	薬物療法 排尿を我慢するトレーニング 骨盤底筋トレーニング

2.腹圧性尿失禁

原因	骨盤底筋群という筋肉の緩み
改善方法	骨盤底筋トレーニング

3.溢流性（いつりゅうせい）尿失禁

原因	前立腺肥大症による尿路の閉塞 骨盤底筋の緩みに起因した排尿筋の緩み
改善方法	前立腺肥大症と関わりの深い生活習慣病の予防 骨盤底筋トレーニングの実施

4.機能性尿失禁

原因	環境的な要因（トイレまで遠くて間に合わないなど） 認知症を含む精神機能障害
改善方法	※当人だけでは解決が難しいため、支援が不可欠 リハビリ 介護 生活環境の整備

骨盤底筋トレーニングは、骨盤底を支える筋肉を鍛えるもので、切迫性・腹圧性・溢流性（いつりゅうせい）尿失禁の症状の緩和に役立ちます。この運動は、尿を止めるように骨盤底筋を収縮させ、その後筋肉をリラックスさせる動作を繰り返すものです。

まとめ

尿失禁は当人にとって大きな悩みとなり得ますが、原因を理解し、適切な改善方法を実施することで症状の緩和・改善が期待できます。尿失禁改善のためのトレーニングを行っても、あまり効果が見られないのであれば医療機関を受診することも選択肢に入れておきましょう。