
「動悸」とは、心臓の拍動を自分で感じられる状態のことです。
普通、健康な人は心臓の拍動を感じません。しかし、左側臥位(左を向いて寝た体制)の場合や、運動や感情の変化があった場合には、ほとんどの人が拍動を感じます。これらは自然なものであり、異常とは考えません。
動悸が異常なものかどうかを判断するには、「動悸の発生の仕方」「拍動の早さ」「規則性」「程度」などといった情報が必要です。動悸の異常が疑われる場合には、これらについて診察時に医師より細かく質問されます。
また、「息切れ」「痛み」「筋力低下」「疲労感」「失神」など、ほかの症状との合併の有無も合わせて聞かれることがあります。こうした症状が合併する場合には、不整脈やより重い障害が原因となっている可能性が高いためです。
患者さんからの訴えは、「心臓がドキンとする」「ドキドキする」「心臓が一瞬止まる(つまづく)ようになる」「脈が速くなる」など、さまざまな表現がとられます。
動悸を起こす原因は、大きく分けて「生理的な原因」「非心疾患性の原因」「心疾患性の原因」の3つに分類されます。これらの原因疾患としては、以下のようなものが挙げられます。
1.生理的な原因
運動、労作、精神的ストレス、精神的興奮
2.非心疾患性の原因
心因性…心臓神経症、不安神経症、過換気症候群
二次性…貧血、発熱、甲状腺機能亢進症、低血糖、ダンピング症候群、褐色細胞種、薬物使用など
3.心疾患性の原因
非不整脈性…大動脈弁閉鎖不全症、その他の弁膜症、先天性心疾患、虚血性心疾患、心不全、心筋症、高血圧
不整脈性…洞性頻脈、徐脈性不整脈、期外収縮、頻脈性不整脈、心房細動
診断
身状態、脈拍、血圧、聴診
必要なスクリーニング検査
ECG、胸部X線検査、尿血液生化学検査、心エコー検査、運動負荷検査、Holter心電図検査、心臓カテーテル検査および電気生理学検査
※必要に応じて行う検査(二次性動悸が疑われる場合)
甲状腺機能検査(甲状腺刺激ホルモン、freeT3、freeT4)、副腎機能検査(血中尿中CA、尿中バニリルマンデル酸)、耐糖能検査
動悸を治療するためには、原因となっているものを治すまたは取り除く必要があります。よって、まずは病院を受診して原因を明らかにしましょう。
もし、非不整脈性心疾患が疑われる場合には循環器専門の医師に診てもらうことが大切です。
※記事初出:広報誌「コンチェルト」第128号
執筆者:庄司好己医師